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春よごれる虫
2005年
布、糸、ドライフラワー、鈴、紙テープ、爪、髪、蜘蛛の巣、化粧品、砂糖、植物種子、米、ベビーパウダー、その他
H7
×W28×D30cm

この立体は本の体裁をとっており、同時期に書いた物語文章と対になっている。
執筆行為と立体の縫製は、当時すでに不可分なものとなっていた。
それら表現媒体を繰り返し行き来することで、「私」は「私小説」に変換される。


本の形態を模したこの作品には日常の些細な記録物が収集され、縫い込められている。
それらの頁は少女の日記のイメージを喚起するが、しかし全体を通して大きな不在感が横たわっている。
母の乳房を奪われた娘の喪の体験が発露となり、ストーリーテリングを導いている。


作品制作によって体験は客体化され虚構化され、人生の文脈から解放される。
それは、個の肉体からの脱却を試みる跳躍となる。

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